「いのちの歌」の原点を辿ると、2008年秋から放送されたNHK連続テレビ小説『だんだん』に行き着きます。島根県松江市と京都府を舞台に、離れ離れに育った双子の姉妹の再会を描いた同作において、竹内まりやは語り(ナレーション)を担当していました。ドラマの物語が進むなか、主演を務める三倉茉奈・佳奈が劇中で歌う重要なナンバーが必要となり、音楽担当の村松崇継氏が作曲したメロディに詞を載せる依頼が竹内まりやへと寄せられます。
当時、竹内まりやは自身のシンガーソングライターとしての知名度や先入観がドラマの世界観を邪魔することを懸念し、あえて「Miyabi」というペンネームで作詞を手掛けました。「雅(みやび)」という響きに故郷・出雲への敬意を込め、主役である双子のデュオが歌う素直な心情に寄り添う形で言葉を紡ぎ出したのです。この事実は後に公表され、音楽ファンや視聴者の間で大きな驚きと称賛をもって受け止められました。
三倉茉奈・佳奈のシングルとして2009年2月に世に出た「いのちの歌」は、ドラマのクライマックスを彩るとともに、静かな反響を呼び起こしました。のちに竹内まりやは当時のインタビューにおいて、「生かされていることへの感謝を、飾らない言葉で伝えたかった」と述懐しています。アーティストのエゴを削ぎ落とし、純粋な祈りを込めたからこそ、この楽曲は特定の時代の流行歌にとどまらない強靱な生命力を宿すこととなりました。