この地の魅力を語るうえで、須佐之男命(すさのおのみこと)の存在は欠かせない。『古事記』や『日本書紀』に見られる荒ぶる神のイメージとは異なり、『出雲国風土記』に描かれる須佐之男命は、人々に農耕や生活の知恵を授け、この地を開拓した親しみ深い守護神としての性格が色濃い。
資料館を一歩出れば、風土記に記された古道や社が周囲の山並みに溶け込んでいる。学芸員が推奨する散策ルートを歩くと、かつて神々が歩んだとされる地形がそのまま残されていることに気づく。土の匂い、木々のざわめき、鳥の声。五感すべてを使って神話の原風景を歩く体験は、机の上の勉強では決して得られない贅沢な時間だ。