ロキソニンを服用しても痛みがピクリとも動かないとき、体内では何が起きているのでしょうか。痛みが消えない決定的な理由は、薬の作用機序と発生している頭痛のメカニズムが根本的に噛み合っていない点にあります。市販薬として広く流通するロキソニンは、プロスタグランジンという炎症や発熱、痛みを引き起こす体内物質の合成を酵素(COX)レベルでブロックする薬剤です。筋肉のこりや外傷に伴う炎症痛に対しては鋭い切れ味を見せる一方、神経伝達物質の異常放出や自律神経反射、頭蓋内血管の急激な拡張によって生じる痛みに対しては、構造的に歯が立ちません。
臨床的にロキソニンが効くまでの時間は、通常服用後30分から60分程度であり、血中濃度は約1.2時間前後でピークに達します。この時間を経過しても痛みの勢いが衰えない場合、その頭痛は「炎症」ではなく別のルートから発生していると判断するのが医学的に合理的です。代表的なのが、脳内の血管が拍動性に拡張し、三叉神経からカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)などの神経ペプチドが放出されることで起こる片頭痛です。この段階に至ると、末梢の炎症を抑えるNSAIDsの効果は極めて限定的になります。
さらに見逃せないのが、後述する「薬物乱用頭痛(薬剤の使用過多による頭痛:MOH)」の存在です。頭痛を恐れるあまり月に10日以上ロキソニンを飲み続けていると、脳の痛みを抑制する中枢神経システムが破綻し、薬が切れるたびに激しい反跳痛が生じる負のループへと突入します。効かない薬を「効くはずだ」と盲信して飲み続ける行為自体が、難治性頭痛を自ら作り出す最大の引き金となっているのです。