羽生結弦とプーさんの関係性を語る上で避けて通れないのが、国際的な規制や時代の変化に伴う数々のドラマです。
まず直面したのがオリンピックにおける厳格な商標権問題(Rule 50)でした。IOCの商業コードにより、大会公式スポンサー以外の企業キャラクターを競技エリアに露出させることは禁じられています。そのため、ソチ五輪や平昌五輪では、愛用のティッシュケースからプーさんの本体が外され、黄色と赤の配色だけを模したカバーや別仕様のケースでリンクサイドに持ち込まれました。それでも羽生はキス・アンド・クライでそのケースを大切そうに抱きしめ、沈黙のメッセージをファンに届け続けました。
そして2020年以降、世界を襲ったパンデミックにより、フィギュアスケート界全体で「花束・プレゼントのリンクへの投げ込み」が全面的に禁止されます。氷上に降り注ぐ黄色い雨の光景はここで一度途絶えることとなりましたが、ファンはバナーや拍手、自席での静かな祈りへと応援スタイルを適応させました。
2022年のプロ転向後、単独アイスショーのツアーを牽引する現在でも、安全管理や演出上の理由からリンクへの投げ込みは原則として制限されています。しかし、バックヤードや公式配信、メディアの取材現場では、今も変わらず傍らに控えるプーさんの姿が幾度となく捉えられており、その絆が失われることはありません。