多くの消費者が抱く「味や鮮度が落ちるのではないか」という疑念に対し、農業現場と食品科学の双方が明確な答えを出しています。結論から言えば、規格外でも美味しい評判の裏には明確な根拠が存在します。
そもそも農産物の流通規格(S・M・LサイズやA品・B品といった等級)は、糖度や栄養価で決められているわけではありません。その大半は「長方形の段ボール箱に隙間なくきっちり詰められるか」「スーパーの陳列棚に並べたときに見栄えが揃っているか」という、物流および小売り現場の都合から定められた寸法と外観の基準に過ぎません。
長年トマト栽培を営む関東地方の農家関係者は、取材に対して次のように胸の内を明かします。
「太陽の光を限界まで浴びて樹上でギリギリまで完熟させたトマトほど、皮が少し割れやすくなります。市場出荷の基準では『裂果(れっか)』として規格外に落とされますが、実のところ、その割れたトマトこそが一番糖度が高く、農家が自分たちで食べる一番美味しいトマトなのです。『規格から外れたもの=味が落ちる』という認識は、完全な誤解だと知ってほしい」
果樹栽培においても同様です。枝に擦れて皮に小さな黒点がついたリンゴやミカンは、外見上の理由だけで市場価値を失いますが、果肉内部の品質やビタミン含有量に何ら影響はありません。むしろ完熟度合いが高く、採れたての鮮度を維持した産直品は、一般的な流通網を経て店頭に並ぶ正規品よりも風味が豊かであるケースすら珍しくありません。