長谷寺の物語を語る上で欠かせないのが、奈良長谷寺を開山したとされる徳道上人の存在である。伝承によれば、徳道上人は1本の巨大な楠の霊木から2体の観音像を造立したという。そのうちの1体が奈良の地に祀られ、もう1体は「縁ある地へ向かい、人々を救済せよ」との願いを込めて海へと流された。
数年後、相模国の初声浦(現在の神奈川県三浦市)に打ち上げられたその像を宝相山に勧請したのが、現在の鎌倉長谷寺の始まりとされている。大和と相模という遠く離れた二つの地を結ぶこのドラマチックな開基伝説は、1000年以上の時を超えて今なお人々の旅情と信仰心を刺激してやまない。