長康の素顔を知る上で極めて重要な史料が、前野家に伝わる古文書群『武功夜話』である。昭和期に発見されて以降、学界ではその史料価値を巡って激しい論争が展開されてきた。成立年代への疑念や後世の加筆を指摘する声もあったが、2026年現在の最新研究では、単なる軍記物にとどまらない「民衆・土豪視点の泥臭い戦国史」として再評価が急ピッチで進んでいる。
『武功夜話』には、公式な歴史書には決して記されない裏話が生々しく残されている。秀吉とのドロドロした交渉の経緯や、陣中での泥臭い苦労話、さらには秀次事件の背後に蠢いていた政治的陰謀の気配まで書き残されているのだ。これらの記述は、冷徹な政治家・秀吉と、愚直なまでに義理を重んじた長康という対比を鮮明に浮かび上がらせる。