名作の主人公である木藤亜也さんは、1962年に愛知県豊橋市で生まれました。活発で勉強熱心、バスケットボールが大好きな少女だった彼女の日常が一変したのは、難関の愛知県立豊橋東高校へ進学した直後、15歳のときでした。
ある日、登校途中に足がもつれて不自然に転倒し、顔面を地面に強打。異変に気づいた母・潮香(しおか)さんとともに名古屋大学医学部附属病院を受診した結果、医師から告げられた診断名が脊髄小脳変性症でした。小脳や脊髄の神経細胞が徐々に変性・脱落し、運動機能を司る中枢が失われていく原因不明の指定難病です。
やがて歩行が困難になり、言葉がうまく発音できなくなる構音障害や嚥下障害が進行。自らの体が徐々に思い通りに動かなくなる恐怖のなかで、亜也さんはノートに自らの感情を書き殴り続けました。それらをまとめた書籍が『1リットルの涙 難病と闘い続ける少女亜也の日記』(名古屋タイムズ社、のちに角川文庫等で刊行)です。手が震えてペンが持てなくなるまで綴られた「生きたい」「生きていてよかったと思える未来がほしい」という叫びは、初版刊行時から多くの読者に強烈な衝撃を与えました。