テレビ史に刻まれた中村倫也のドラマ胸キュン名場面を振り返ると、役柄の振れ幅の広さに改めて驚かされる。作品ごとに異なるアプローチで視聴者を魅了してきた歴史を紐解く。
社会現象を巻き起こした『凪のお暇』(2019年・TBS系)では、危険な優しさを纏ったイベントオーガナイザー・安良城ゴン役を好演した。特に語り草となっているのが、中村倫也と黒木華のキスをめぐるやり取りだ。ベランダ越しに隣人として出会い、無防備な距離感から自然と唇を重ねるシークエンスは、いわゆる「メンヘラ製造機」と呼ばれる青年の底なしの柔らかさを完璧に体現していた。中村倫也の凪のお暇におけるキスシーンは、相手を包み込むような手の平の温度感まで伝わる名場面として、放送当時X(旧Twitter)のトレンドを独占した。
続く『この恋あたためますか』(2020年・TBS系)では、冷徹なコンビニチェーン社長・浅羽拓実役として全く異なる顔を見せた。新谷誠(仲野太賀)との友情や立場に葛藤しながらも、ヒロイン・井上樹木(森七菜)への想いが溢れ出すクライマックス。中村倫也と森七菜のキスシーンは、身長差を活かした力強い引き寄せと、大人の男性が見せる脆さが同居した至極の瞬間となった。制作関係者の証言によると、中村倫也のこの恋あたためますかでのキスシーンは、現場の寒冷な環境下でも相手役が委縮しないよう、合間に徹底してリラックスした空気を作り上げていたという。
さらに『初めて恋をした日に読む話』(2019年・TBS系)での元ヤン高校教師・山下一真役(中村倫也のはじこいキスシーン未遂を含む車内での接近戦)や、『美食探偵 明智五郎』(2020年・日本テレビ系)で魅せた小池栄子演じる殺人鬼・マグダラのマリアとの背徳的で耽美な中村倫也の美食探偵でのキスなど、ジャンルを問わず観客の情緒を揺さぶり続けている。