野村氏が遺した数多の言葉のなかでも、座右の銘として広く知られているのが野村克也勝ちに不思議の勝ちありという警句です。江戸時代の剣術家・松浦静山の著書『甲子夜話』に由来する「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という言葉を、野村氏は勝負の世界における鉄則として定着させました。
偶然の勝利を実力と勘違いした瞬間に組織の崩壊が始まるという戒めであり、一方で敗北には必ず論理的な理由が存在するため、失敗を直視してプロセスを改善し続ければ再現性のある勝利へ近づけるという論理的思考の表明です。この思想は、現代のデータドリブン経営やポストモータム(事後検証)の重要性と完全に一致しています。
また、指導者としての晩年を象徴する野村克也人を遺すは上(財を遺すは下、事業を遺すは中、人を遺すを上とす)というフレーズも、野村克也心に刺さる言葉としてマネジメント層に深く刻まれています。自身が監督として残した優勝トロフィーの数以上に、古田敦也氏、高津臣吾氏、栗山英樹氏、宮本慎也氏といった次世代のリーダーを育成した事実こそが、この言葉の重みを物語っています。