「何度洗ってもビクともしない縫製」を実現する境界線は、縫い方のテクニック以前に、道具の選定段階でほぼ決まっている。多くの人が手元にある普通の木綿カタン糸を無意識に使ってしまうが、これこそが落とし穴だ。濡れては乾くを繰り返す過酷な環境下では、綿糸は繊維が痩せ、やがて摩擦で切れてしまう。
プロの現場で迷わず選ばれるのは、引き裂き強度と耐水性に優れたポリエステル縫い糸・フランス刺繍針のコンビネーションだ。ポリエステル糸は適度な伸縮性を備えており、生地が引っ張られた際にもショックを吸収して断線を防ぐ。さらに針先が鋭利で軸に適度な太さがあるフランス刺繍針を使えば、硬く目の詰まったワッペンの土台布も、指先に無駄な力を込めることなくスムーズに貫通できる。
縫う際の決定的な秘訣は「玉結びをワッペンの裏側に完全に隠し、布地をすくうピッチを2ミリ以内に保つ」こと。一度布をすくったら、糸を真上に引くのではなく、進行方向に向かって布面と平行に優しく引き締める。これだけで糸の浮きが消え、洗濯機の回転ドラムに糸が引っかかるリスクを極限までゼロに近づけられる。