このテーマを語る上で避けて通れない金字塔が、作家・重松清が紡ぎ出した小説『とんび』(角川文庫)である。不慮の事故で最愛の妻を失ったトラック運転手のヤス(市川安男)が、不器用ながらも全力で息子・アキラを育て上げる軌跡を描いたこの作品は、まさに言葉通りの親子の相克と昇華を浮き彫りにした。
字もろくに読めず、カッとなれば手が出る昔気質の父親。そんな「とんび」のような父親から、東京大学法学部へと進学する優秀な息子「鷹」が育っていく。重松清の鋭い筆致は、単なるサクセスストーリーではなく、親が子に抱く誇りと、自らの無学ゆえの劣等感、そして巣立ちを見送る孤独を冷徹かつ温かく描き出した。卓越したヒューマンドラマとして、今なお多くの読者の胸を締めつける。