四国を巡る旅の醍醐味は、名所旧跡や食覚だけでなく、地元の人々と言葉を交わす瞬間にこそ宿る。それぞれの土地で頻出するキラーフレーズを知っておくだけで、旅の解像度は一気に跳ね上がる。
香川のうどん店や家庭で耳にする「ぴっぴ」は幼児語でうどんを指すが、大人同士の会話でも「むつごい(脂っこい、味が濃くてしつこい)」という表現は日常茶飯事に飛び交う。愛媛に立ち寄れば、穏やかな笑顔とともに「だんだん(ありがとう)」と声をかけられる場面に出くわすだろう。柔らかく相手を包み込む伊予のクッション言葉だ。
徳島で道に迷った際、地元の人から「そこにあるでないで(そこにあるじゃないか)」と言われても決して怒られているわけではない。親密さの裏返しである阿波独特のリズムなのだ。そして高知の酒場に足を運べば、「いごっそう(頑固で筋の通った男)」や「はちきん(快活で行動力のある女性)」たちが、「たまるか(たまらない、驚いた)」と杯を交わす熱気に出会える。耳を澄まし、自らも少しだけ口にしてみることで、旅先での距離感は劇的に縮まるはずだ。