映画での成功に甘んじることなく、草笛光子は日本の演劇界におけるミュージカル分野のパイオニアとしても歴史的な足跡を残してきた。まだ日本国内で本格的なブロードウェイ・スタイルの舞台が定着していなかった時代から、彼女は情熱を持って海外の本格的なミュージカル作品へ果敢に挑み続けた。
自ら冠番組『光子の窓』で海外のショービジネスの風を茶の間に届けつつ、舞台上では歌、ダンス、芝居の三拍子が揃った稀有な表現者として舞台文化の成熟に貢献。『ラ・カージュ・オ・フォール』をはじめとする数々の名作舞台で見せた華麗なステップと圧倒的な歌唱力は、演劇関係者やファンから絶大な賛辞を浴びた。映画と演劇の双方で妥協を許さず培われた実力こそが、彼女を単なる銀幕スターにとどまらない、本物の表現者へと押し上げた原動力である。