山折が好んで論じる思想家の中に、平安の巨星・空海と、鎌倉の求道者・親鸞がいる。密教の壮大な宇宙観をもって現実世界の肯定を試みた空海と、人間の救い難い業を見据えて他力念仏に徹した親鸞。この一見対極にある二人の巨人は、山折の思索の中で見事に対話を始める。
私たちは今、気候変動や地政学的リスク、人工知能の急速な進化といった文明の転換点に直面している。自己の力だけですべてをコントロールできるという近代的な傲慢さは、もはや通用しない。極限の状況において人間はいかにして尊厳を保ち、他者と共に生きることができるのか。
山折が指し示すのは、自己の限界を深く自覚したときに初めて開かれる「慈悲」の境地だ。満開の桜が散る姿に無常を感じ、吹き抜ける風に命の気配を聴き取る。日本人が培ってきた微細な感受性を取り戻すことこそが、荒れ狂う時代を生き抜く最高の処方箋となるに違いない。 (出典: 山折 哲雄(Yahoo!ニュース))
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