本作の伝説を語る上で欠かせないのが、和歌山県熊野地方を中心に行われたわずか17日間の怒濤のロケ撮影だ。台風の襲来、目まぐるしく変わる天候、荒波が打ち寄せる岩場や急勾配の坂道。肉体的にも精神的にも追い詰められた極限状態の中で、キャスト陣はカメラの前に立っていた。
小松菜奈と菅田将暉の間で交わされた演技の火花は、まさに命の削り合いと呼ぶにふさわしい。計算された芝居ではなく、現場の空気、風、波の音、そして相手の呼吸に即座に反応し合う生々しいセッション。火祭りの夜の狂乱、海へ飛び込む衝動、バイクの二人乗りで叫ぶシーンに至るまで、二人の間に生じた摩擦と信頼が、フィクションの枠を軽々と突破する奇跡的なカットを次々と生み出した。