キャリアを重ねるにつれ、彼女の真骨頂となったのが「共感と痛々しさが同居するヒューマンドラマ」での演技だ。劇作家・根本宗子の原作を映画化した『もっと超越した所へ。』で見せたダメ男に振り回される主人公・真知子役は、その到達点の一つと言える。
部屋着姿で感情を剥き出しにし、みっともなく泣き叫び、それでも愛を諦めきれない。そんな剥き出しの人間臭さを、前田敦子は驚くほど軽やかに、かつ痛切に演じ切った。肉体的な露出にとどまらず、精神の奥底を観客の前に晒け出すそのアプローチは、映画ファンや批評家からも絶賛を浴びた。痛々しいのにどこか愛おしい。そんな唯一無二のヒロイン像を確立した瞬間だった。