なぜ特定の相手に対して、頭で考えるより先に全身が拒絶反応を示してしまうのでしょうか。その最大の鍵を握っているのが、白血球の型を決めるHLA遺伝子(主要組織適合性複合体)の存在です。
スイスの動物学者クラウス・ヴェーデキント博士が行った有名な「Tシャツ実験」をはじめとする一連の研究により、人間は自分と異なるHLA遺伝子を持つ異性の体臭に惹かれ、型が近い相手の匂いを「不快」と感じる傾向が実証されています。これは、免疫システムの型が離れた相手と子孫を残すことで、より多様な病原体に対応できる強い子どもを残そうとする進化生物学的な防衛本能に他なりません。
つまり、相手の「匂い・体臭」や「醸し出す空気」に対して生理的な嫌悪感を覚える場合、あなたの鼻腔にある嗅覚受容体と脳の扁桃体が「この相手とは遺伝子相性が合わない」「免疫学的な距離を置くべきだ」と警告を発している状態と言えます。直感による拒絶は、何百万年もの進化の過程で磨き上げられた極めて精緻な生体センサーの結果なのです。