日本において本作がこれほど長きにわたり愛読され続けている背景には、早川書房の果たした大きな役割がある。ハヤカワ・ミステリ文庫のラインナップに加わって以来、名訳と名高いテキストを通じて、世代を超えた多くの読者がこの心理描写の傑作に触れてきた。
日本の出版業界においても、ミステリという枠組みを超えた「人間の本質を突く文学作品」としての立ち位置が確立されており、文庫棚の中で異彩を放ち続けている。装丁の美しさや翻訳の端正さが、主人公バーバラの内に潜む毒と対比をなし、読後感の深い余韻をいっそう際立たせている。