ポップカルチャーが照射する京都の横顔も、旅人を惹きつけてやまない。劇場版『名探偵コナン 迷宮の十字路』で精緻に描かれた弁慶石や鞍馬寺の木の根道、先斗町の石畳は、映画公開から星霜を経た今も聖地巡礼の足跡が絶えない。あの作品が捉えたのは、碁盤の目に刻まれた歴史のミステリーと、迷路のような路地の持つ魔力だった。
対照的に、近年世界的な共感を呼んだのがNetflixで世界配信された是枝裕和監督のドラマ『舞妓さんちのまかないさん』だ。そこで描かれたのは、きらびやかな花街の表舞台ではなく、台所で刻まれるナスの音やすり胡麻の香り、路地裏の生活感である。旅行者の関心は、記念写真を撮るだけの観光から、画面越しに感じた「京都の日常の手触り」を追体験することへと鮮やかにシフトしている。花街の裏手にある小さな喫茶店や、地元の人で賑わう八百屋の軒先。カメラを向けずにただ佇む時間の中にこそ、映像が捉えた詩情が宿っている。