フルトレーラー事故の被害者となる一般ドライバーの多くは、「相手が止まってくれると思った」「見えているはずだと思っていた」と証言します。しかし、そこには大型連結車両ならではの物理的な認識ギャップが存在します。
大型トラックやトレーラーのキャブは地上から2メートル以上の高位置にあり、直前・直左・斜め後方に広大な死角が広がっています。特に左折時、フルトレーラーは大きく右に頭を振ってから曲がる「あおりハンドル」を取らざるを得ない場合があります。このとき生じた左側のスペースに原付バイクや軽自動車が潜り込むと、ドライバーの視界からは完全に消え去り、巨大な後輪に巻き込まれる凄惨な事故へ発展します。
また、交差点右左折時の内輪差(後輪が前輪よりも内側を通る現象)は、車長が長くなるほど極端に大きくなります。セミトレーラーの内輪差が約2〜3メートルであるのに対し、連結方式によっては後部トレーラーが歩道や対向車線側の待機車両ギリギリまで切れ込んできます。
交通事故における過失割合の実務においても、一般車両側の誤認が不利益を招くケースがあります。例えば、高速道路で大型トレーラーの前方に無理な割り込みを行い、直後に急ブレーキを踏んで追突された場合、通常の追突事故(10対0)とは異なり、割り込んだ側に30%〜50%以上の重大な過失割合が課される判例が増えています。車重40トンの車両が乗用車と同じ距離で急停止することは物理的に不可能であるという事実が、法的な判断基準としても定着しています。