2008年3月26日、松井秀喜氏はニューヨーク・ヤンキースの春季キャンプ地であるフロリダ州タンパにて、マスコミ各社へ向けて突然の結婚発表を行いました。翌27日に開かれた緊急記者会見は、日米の報道陣が詰めかける異例の熱気に包まれました。
会見の場で松井氏が報道陣に提示したのは、本人がサインペンで描いた「妻の自筆似顔絵」でした。やや丸顔で大きな瞳が特徴的なそのイラストを掲げながら、松井氏は照れ笑いを浮かべてこう語っています。
「あんまり似てないと思いますけど、勘弁してください。一般の方なので、名前や顔写真の公表は控えさせていただきます。彼女の立場やこれからの生活を静かに見守ってほしい」
この対応は、当時としては画期的なメディアコントロールでした。昭和から平成初期のプロ野球界では、選手の配偶者は記者会見に同席して顔を晒すのが通例とされていました。しかし、すでに名門ヤンキースの主砲として国際的知名度を誇っていた松井氏は、妻が受ける精神的負荷や過剰なプライバシー侵害を回避するため、あえて「似顔絵の提示」というユーモアを交えつつ、越えてはならない一線を明確に引いたのです。