魚類を数える際、最も身近な単位は「匹(ひき)」ですが、干物に「匹」を使うのは国語的・文化的に不自然とされています。助数詞の研究者や国語辞典の編纂データによると、「匹」は四足の獣や動き回る小動物、生きて泳いでいる魚を対象とする単位です。海や川を泳いでいる段階では「1匹の魚」であっても、水揚げされて息絶え、さらに職人の手で包丁を入れられて内臓を取り除かれ、天日や乾燥機で干し上げられた段階で、それは生命体ではなく「平面的な加工食品」へと姿を変えます。
そのため、干物の正しい数え方の基本は、薄く平たい形状を指す「枚(まい)」へとシフトします。実際にアジやホッケの開きを観察すれば明らかなように、背開きや腹開きにされた干物は、すでに魚の立体的なフォルムではなく平らな板状の姿をしています。日本語は古来より、対象物の「現時点での外見的特徴」を極めて鋭利に捉えて助数詞を割り当ててきた言語であり、干物単位として「枚」が定着したのは極めて合理的な帰結と言えます。
また、市場のセリ人や水産流通の現場では、同じ干物であっても取引単位や荷姿によって呼び名が使い分けられています。生き物としての命をいただく意識と、保存食として極限まで加工した先人の知恵が、助数詞の劇的な変化にそのまま刻み込まれているのです。