作家としての深みを知るうえで欠かせないのが、吉田篤弘の経歴 プロフィールと、妻である吉田浩美氏と結成したデザインユニット「クラフト・エヴィング商會」の歩みです。1962年東京に生まれた彼は、物心ついた頃から本という物体が放つ質感や匂いに魅せられて育ちました。
クラフト・エヴィング商會名義では、著作の発表のみならず、数々の文芸書の装丁 ブックデザインを手がけてきました。2001年にはその卓越した造本設計が高く評価され、第32回講談社出版文化賞ブックデザイン賞を受賞しています。紙の厚み、フォントの選定、余白のミリ単位の調整に至るまで徹底された美意識は、まさに「物語の器としての本」を極限まで追求した職人技です。
この造本へのこだわりは、作家単独としての文体にも色濃く反映されています。言葉の響き、行間の広がり、ページをめくる心地よいテンポ感そのものが、視覚的・触覚的なアートとして緻密に計算されている点が、他の作家にはない決定的な強みとなっています。