人間の黒目の中央にある瞳孔の周囲、色がついているリング状の部分を「虹彩」と呼びます。この虹彩の色が左右の目で全く異なったり、同じ虹彩の中で部分的に異なったりする状態の総称が虹彩異色症、学術的にはヘテロクロミア(Heterochromia iridis)です。英語圏ではバイアイ(Bi-eye)やオッドアイ(Odd-eye)とも呼ばれますが、学術・臨床の現場ではヘテロクロミアの呼称が統一して用いられます。
虹彩の色を決定づけている唯一最大の要素は、皮膚や髪の毛の色と同じくメラニン色素の量と密度です。虹彩の間質(結合組織)に存在するメラノサイト(色素細胞)がどれだけのメラニンを作り出し、蓄積しているかによって、人間の瞳は青、緑、ヘーゼル、ブラウンなど多様な色彩を見せます。メラニン色素が極めて少ないと光の波長が散乱して青く見え、メラニンが豊富に沈着するほど光を吸収して濃い茶褐色に見える物理的仕組みです。
目の色が左右違う人は、何らかの生体反応によって左目と右目でメラノサイトの活性度や色素の沈着プロセスに明確な差異が生じた結果として誕生します。ヘテロクロミアには主に以下の3つのバリエーションが存在します。
- 完全型虹彩異色症(Complete Heterochromia):左右の虹彩が完全に異なる色(例:片目が青色、もう片方が褐色)。
- 部分型虹彩異色症(Sectoral Heterochromia):1つの虹彩の中に2つの異なる色が扇状や斑点状に混在する状態。
- 中心性虹彩異色症(Central Heterochromia):瞳孔のすぐ周囲を取り囲む内側のリングと、外縁部で異なる色相が同心円状に広がる状態。