インターネット上のドラマ批評や当時の掲示板などでは、「視聴率が前評判ほど爆発しなかった」という言説が散見されることがあります。全話平均視聴率は12.3%(ビデオリサーチ調べ・関東地区)となっており、前後の松本潤主演作や過去の月9黄金期と比較されて語られるケースが少なくありません。
しかし、メディア論の観点からこの時代を俯瞰すると、まったく異なる実態が浮かび上がります。
2010年当時のフジテレビ月9枠は、従来の派手なトレンディ路線から、より繊細なヒューマンドラマや多様な家族形態を描くリアリズム路線への転換期にありました。『夏虹』は、シングルマザーの再婚や二世タレントの葛藤という、現代に通じるリアルな社会的テーマをいち早く取り入れた先進的な作品でした。キャスト陣にも、沢村一樹、桐谷美玲、笠原秀幸、永山絢斗、松重豊、伊東四朗といった実力派が脇を固め、脚本家の大森美香(連続テレビ小説『あさが来た』や大河ドラマ『青天を衝け』などを執筆)が紡ぐ丁寧な会話劇は、放送終了後も根強い高評価を獲得し続けています。
劇中で描かれた温かな人間賛歌と、そこに寄り添った『Love Rainbow』のメッセージ性は、単なる刹那的なヒット曲を超えて、作品の評価を長期的に支える土台となりました。