「漢字には必ず音と訓の両方がある」と思い込んでいると、手痛い失点を喫します。実は、「訓読みしか持たない漢字」と「音読みしか持たない漢字」が明確に存在します。
訓読みしか持たない漢字の代表格が、日本で独自に作られた「国字(和製漢字)」です。中国から伝来したものではないため、そもそも中国風の発音(音読み)を持ち得ません。教育現場で頻出する国字には以下のようなものがあります。
【訓読みしかない代表的な漢字(国字など)】
・峠(とうげ):山を登って下る境界を表す日本独自の漢字。
・辻(つじ):道が十文字に交差する場所を表す国字。
・畑・畠(はたけ):火で焼いて耕した田を表す国字。
・榊(さかき):神事に用いる神聖な木を表す国字。
・笹(ささ):日本列島に自生する小型のタケ類を指す国字。
・働(はたらく):人が動くことを意味して日本で創出された国字(※のちに中国へ逆輸入)。
・込(こむ/こめる):中に物を入れる動作を表す国字。
・枠(わく):木で作った囲いを表す国字。
一方で、中国から文物や概念そのものがダイレクトに輸入された名詞には、「音読みしか持たない漢字」も多数存在します。「肉(ニク)」「菊(キク)」「毒(ドク)」「駅(エキ)」「茶(チャ・サ)」などは、日本古来の大和言葉に対応する語が存在しなかったため、訓読みが設定されていません(あるいは現代常用漢字表で訓読みが認められていません)。
近年の中学受験国語漢字対策において、難関校(開成、麻布、灘、桜蔭など)の出題傾向を分析すると、単なる書き取り問題は減少し、文脈内での「音訓両方ある漢字の判別法」や「熟語の構成パターン判定」を問う論理的設問が確実に増加しています。例えば、「『私語』の『語』と『語る』の『語』の読みの違いを答えさせ、同じ判別パターンの熟語を選ばせる」といった構造理解を迫る問題です。暗記偏重の学習法では、こうした応用問題に太刀打ちできません。