「熱いお湯のほうがしっかり成分が出るはず」という思い込みは、ハンドドリップにおいて最も危険な罠です。沸騰直後NGの理由は、コーヒー粉に含まれる成分の抽出スピードと熱反応のメカニズムにあります。
コーヒーの成分は、湯の温度が高ければ高いほど短時間で大量に溶け出します。華やかな香りや心地よい酸味といった「美味しい成分」は比較的低い温度でも抽出されますが、舌を刺すような渋み、過度な苦味、エグみといった雑味が出る原因となる難溶性のタンニンや焦げ成分は、95℃を超える熱湯で一気に溶け出してしまう性質を持っています。
100℃近い熱湯を注ぐと、粉の表面が熱破壊され、本来抽出したくないネガティブな苦味まで強制的に引き出されてしまいます。「しっかり抽出する」ことと「過抽出にして雑味を出す」ことは全くの別物です。濁りのない澄んだクリアな後味を作るためには、沸騰状態から確実に温度を落とすワンクッションが欠かせません。