彼の権力への執着は、どこで培われたのか。時計の針を20世紀初頭に戻そう。日本統治下において上海で樹立された大韓民国臨時政府で初代大統領に就任したものの、路線対立から弾劾された苦い過去を持つ。早くからアメリカへ渡り、プリンストン大学で博士号を取得した彼は、国際情勢を冷徹に見通す外交感覚を武器に独立運動の主導権を握り続けた。
米国の政界に強力なパイプを持ち、国際協調による独立を信じた彼の戦略は、当時の独立運動家たちの中でも異彩を放っていた。武力闘争を重視する派閥とは決定的に相容れず、時に冷酷なまでの政治的立ち回りでライバルを排除していく。第二次世界大戦の終結後、混迷を極める朝鮮半島に帰国した男は、米軍政の思惑と冷戦の激化を巧みに利用しながら、自らを唯一無二の指導者として位置づけていった。