では、冷やし中華にマヨネーズをかける文化圏は具体的にどこまで広がっているのか。列島を縦断する調査を進めると、単純な「東日本対西日本」という二項対立では説明がつかない、興味深いモザイク状の分布が浮かび上がる。
マヨネーズ派の絶対的要塞である愛知・岐阜・三重の東海三県を起点とすると、北陸の富山・石川・福井でも極めて高い浸透率を示す。さらに北上すると、山形や福島、青森といった東北地方の一部地域でも「かけるのが普通」という回答が多数派を占めるスポットが出現する。かつてバラエティ番組『秘密のケンミンSHOW極』がこの現象を取り上げ、日本中に衝撃を与えたが、その境界線は今なお独自の生態系を維持している。
一方で、首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)や関西圏(大阪・京都・兵庫)では、依然として「からし単体派」が圧倒的多数を占める。関西では冷やし中華そのものを「冷麺」と呼ぶ独自の食文化が根付いているが、そこにマヨネーズを持ち込む客は極めて稀だ。日本海側や東北の寒冷地で受け入れられた背景には、濃厚な味付けを好む風土や、後述する流通チェーンの展開方針が複雑に絡み合っている。