なぜ本来は指導的立場にあるべき男性社員が、陰湿な「お局」へと変貌を遂げてしまうのでしょうか。産業カウンセラーや精神科医への取材を重ねると、その背景には現代の雇用システムが生み出した男のお局の心理的な歪みが浮き彫りになってきます。
最大の発端となるのが、お局男性マウンティングの燃料となる「承認欲求の飢餓と挫折感」です。成果主義の浸透や年功序列の崩壊に伴い、自らのキャリアに対する将来不安や出世競争からの脱落を経験した中高年社員は、激しい自己防衛本能を働かせます。「自分は会社に貢献してきた」「若い世代より能力が高いはずだ」という認知の歪みを維持するために、若手や従順な同僚を見下し、小言を浴びせることで辛うじてプライドの均衡を保とうと試みるのです。
また、日本企業に長く根付いていた昭和的な「男社会の結束(ホモソーシャル)」が希薄化し、業務のデジタル化が進んだことで、かつて通用していた「阿吽の呼吸」や「職人的な勘」が通用しなくなりました。自らの居場所と縄張りを防衛するため、わざと業務をブラックボックス化し、「自分しか分からない手続き」を人質にしてインフォーマルな権力を握ろうとします。
心理学における「心理的バウンダリー(自他の境界線)」の破綻も見逃せません。お局化する男性は、他者の成功や新しい仕事のやり方を「自分に対する個人的な攻撃や否定」と過剰に受け止めてしまいます。そのため、先手を打って相手の足を引っ張り、コントロール下に置くことでしか自己の存在価値を実感できない悪循環に陥っています。