「いつも部屋を綺麗に掃除しているのに、なぜ服を食べる虫がどこから湧いてくるのか」と頭を抱える人は少なくありません。しかし、害虫たちは家の中で自然発生しているわけではありません。極めて日常的な隙を突いて、100%外の世界から侵入しています。
主な侵入経路は以下の3つです。
- 洗濯物や布団の屋外干し:ヒメマルカツオブシムシの成虫はキク科の白い花(マーガレットやハルジオンなど)の花粉を好む性質があります。そのため、屋外に干した白無地のシャツやシーツに誘引されて付着し、そのまま室内に取り込まれてしまいます。
- 外出時の衣服への付着:春先(4月〜6月頃)、活発に飛び回る成虫が外出中のコートやジャケットにとまり、人間自らが室内に運び込んでしまうケースが後を絶ちません。
- 網戸の隙間や換気口:体長わずか数ミリの成虫にとって、網戸のわずかな歪みや換気扇の通気口は容易に通過できる侵入経路です。
侵入した成虫は、クローゼットの奥深くやタンスの底といった「暗くて空気が滞留し、人間の手が届かない場所」を選んで数十個から100個単位の卵を産み落とします。羽化した幼虫が繊維を食べ始め、あの無残な虫食い穴が出現するのです。
では、そもそもなぜ彼らは服を食べるのでしょうか。服に穴が開く直接的な理由は、彼らが動物性繊維に含まれるタンパク質「ケラチン」を消化吸収できる特殊な腸内酵素を持っているからです。羊毛(ウール)、カシミヤ、アンゴラ、モヘヤ、シルク、羽毛(ダウン)などは彼らにとって極上の栄養源となります。
「ポリエステルや綿なら安心」と考えるのは危険な誤解です。幼虫は植物性繊維や化学繊維そのものを消化することはできません。しかし、汗、皮脂、食べこぼしの油分、醤油などの調味料汚れが付着していると、その汚れを摂取するために周囲の繊維ごと噛みちぎって穴を開けてしまいます。「1回しか着ていないから」と洗わずにクローゼットへ戻した服が真っ先に食害に遭うのは、この汚れこそが害虫を呼び寄せる強力なフェロモンとなるためです。