「毎日リストカールを続けているのに、時計のベルトの穴が1つも変わらない」という相談は、パーソナルトレーナーの現場でも頻繁に寄せられます。結論から述べると、手首の筋トレによって手首関節そのものを物理的に太くすることはできません。
手首が太くならない理由は、人体の構造を俯瞰すれば明白です。手首のくびれ部分(橈骨と尺骨の遠位端、手根骨周辺)には、肥大化するポテンシャルを持った「筋腹(きんぷく:筋肉の肉厚な中央部分)」がほとんど配置されていません。手首に走っているのは、肘側にある筋肉から指先へと運動を伝える強靭な「腱(けん)」と骨、そしてそれらを束ねる腱鞘(けんしょう)や靱帯です。
骨の太さは遺伝的な骨格構造や成長期のホルモン分泌で大枠が決まり、成人後に筋トレの負荷だけで骨そのものが著しく太くなることはありません。また、腱はコラーゲン線維の束であり、鍛えることで密度や引っ張り強度は増すものの、筋肉のように横断面積が何倍にも膨張することはありません。
それにもかかわらず「あの選手は手首周りが丸太のように太い」と感じられるケースが存在します。その真相は、手首のすぐ上部に位置する前腕屈筋群や腕橈骨筋が極限まで発達しているため、視覚的な錯覚として手首周辺全体が圧倒的な厚みを帯びて見えているのです。つまり、「手首を太くする方法」を探している読者が目指すべきゴールは、手首そのものではなく「前腕筋群の徹底的なバルクアップ」に他なりません。