渋皮煮づくりの第一関門にして最大の難所が、硬い鬼皮(外皮)の処理です。「前日から一晩水に浸けておく」という古典的な下処理法が長年語り継がれてきましたが、長時間の浸水は栗の風味が水に逃げ出す要因にもなり得ます。現在、合理的な料理家たちの間で主流となっているのが、「数個ずつ熱湯に浸ける熱ショック法」です。
ボウルに沸騰した熱湯を注ぎ、栗を5〜6個ずつ投入して約5分〜10分放置します。一度に大量の栗を入れるとお湯の温度が急低下するため、作業する分だけを小分けにして温めるのが最大のコツです。熱によって鬼皮のセルロース繊維だけが柔らかく緩み、内部の渋皮には熱が通り過ぎない絶妙な状態を作り出せます。
包丁を入れる手順にも明確なセオリーが存在します。滑りやすい丸い頭から刃を入れるのは極めて危険であり、渋皮を削ぐリスクを高めます。正解は「栗の座(平らな底の部分)」に包丁の刃元を当て、先端に向かって繊維に沿って引き上げるように剥く手法です。座の硬い部分を薄く切り落とし、そこから鬼皮の繊維をめくるように包丁をスライドさせれば、渋皮を一度も傷つけることなく、驚くほどツルリと剥き進められます。