編集部が現場のマネジメント層や従業員を対象に行った取材では、ハード面に偏重し、ソフト面を蔑ろにしたことによる生々しいトラブル事例が数多く浮き彫りになっています。
都内の大手製造業に勤務するIT部門リーダーは、自著や業界カンファレンスの場で次のように悔恨を露わにしています。
「2024年に数億円を投じて全社規模の業務自動化システムを導入しました。経営陣は『これで残業時間が半減する』と胸を張りましたが、現場には利用マニュアルすらまともに配られず、説明会も形式的なものが1度きり。結果として、導入から1年が経過しても利用率は全体の15%未満。現場の社員からは『以前のエクセル管理のほうが早い』と反発され、最終的に古い手入力作業へと逆戻りしてしまいました」
ネット上のコミュニティ(SNSやビジネス系Q&A掲示板)を検証しても、同様の不満や悲痛な叫びは後を絶ちません。
- 「役員が鳴り物入りで導入した社内SNS。投稿ルールも運用目的も示されないまま放置され、今や役員の訓示だけが流れる過疎地帯になっている」
- 「地方の観光拠点に数千万円かけて建てられた体験施設。内装は豪華だが、常駐するスタッフはおらず、パンフレットが積まれているだけ。誰も寄り付かない」
- 「高級ホテルに宿泊したが、客室のタブレット端末がエラーを起こした際、フロントスタッフが操作方法を一切知らず冷たくあしらわれた。二度と泊まらない」
これらの事例に共通するのは、「道具を買いさえすれば、自然と現場が回るはずだ」という経営・企画側の無邪気な思い込みです。道具を使いこなすための教育、現場のモチベーション管理、運用を定着させるまでの粘り強いサポートといった「ソフト面の手間」を軽視した結果、巨額のハード投資が丸ごと水泡に帰しているのです。