深夜の検問現場で「ピピッ」というアルコール検知器の警告音が鳴り響いた後、被疑者はどのような現実に直面するのか。元交通鑑識関係者への取材や、摘発経験者の公判記録・陳述書から浮かび上がるのは、一切の猶予がない司法のベルトコンベアです。
現場ではまず、簡易検知管によるスクリーニングののち、警察車両内または警察署で気密性の高い測定機を用いた精密測定が行われます。数値が0.15mg/Lを超えていることが確定すると、その場で交通切符(いわゆる「赤切符」)が切られ、車両の運転は即座に禁じられます。車はレッカー移動されるか、現場近くのコインパーキングに強制留置され、家族などの同乗者がいない限り自力運転での帰宅は認められません。
後日、指定された警察署へ出頭し、交通捜査係の取調室で詳細な供述調書が作成されます。「何時から何時まで、どこで誰と何をどれだけ飲んだか」「なぜ車を運転したのか」を一言一句追及され、指紋採取およびマグショット(顔写真撮影)が行われます。この段階で犯罪捜査規範上の「被疑者」として扱われる屈辱を味わうことになります。
事件が検察庁に送致されると、平日の日中に区検察庁または地方検察庁への出頭が命じられます。検察官による10〜15分程度の短い事情聴取の席で、被疑者は「略式手続に関する同意書」への署名・捺印を求められます。これに同意することで、法廷に立たずに書面審査で罰金刑を確定させる手続きに入ります。数日から数週間後、自宅に簡易裁判所から「略式命令謄本」と「罰金納付通知書」が届き、指定された金融機関の窓口等で現金一括納付を行わなければなりません。
罰金が払えない場合はどうなる?「労役場留置」という過酷なペナルティ
「貯金がないから罰金30万〜50万円を支払えない」という言い訳は、国の徴税・司法執行において一切通用しません。罰金刑の分割払いは法令上認められておらず、期限内に全額を一括で納付するのが鉄則です。
督促を無視し続け、財産差し押さえも不可能な場合、刑法第18条に基づき「労役場留置(ろうえきじょうりゅうち)」が執行されます。これは刑務所に併設された労役場に身柄を強制収容され、1日あたり5,000円換算で所定の軽作業(紙袋折りや封筒貼りなど)に従事させられる制度です。40万円の罰金を科された場合、実に80日間もの間、外部との連絡を絶たれて身柄を拘束されます。社会人にとって80日間の行方不明・拘禁は、事実上の失職を意味します。