「働きたくないと口にする人間は、社会を舐めている」。昭和から平成にかけて定着したこうした精神論は、精神神経免疫学や産業保健の現場検証によって明確に否定されつつあります。厚生労働省の労働安全衛生調査や人事関連機関の取材データをひもとくと、働くのが怖い甘えと切り捨てる風潮こそが、当事者の精神的孤立を深刻化させている実態が浮き彫りになります。
産業医や臨床心理の専門家へのヒアリングによれば、仕事への強い恐怖は脳の扁桃体が過剰に活性化し、「危険地帯へ近づくな」と警告を発している状態にほかなりません。過去の重大な叱責や理不尽な要求によって「職場=生命を脅かされる空間」と条件づけられてしまった脳は、心拍数を上げ、筋肉を硬直させ、物理的な拒絶反応を引き起こします。
これを個人の気合や覚悟の問題として片づけるのは、骨折した足で走れと命じるのと何ら変わりません。まずは「恐怖を感じている自分」を客観的な生体反応として受け止め、自分に課してきた過剰なプレッシャーを解除することこそが、回復への絶対的な前提条件です。