妊活を始めたカップルから頻繁に寄せられるのが、「月経周期はほぼ正常なのに、排卵検査薬が反応せず妊娠に至らない」という深刻な悩みです。この現象の核心にあるのが、医学的に「破綻出血(破綻性消退出血)」と呼ばれるメカニズムです。
正常な排卵周期では、成熟した卵胞から卵子が排出された後、卵胞が「黄体」へと変化し、プロゲステロン(黄体ホルモン)を分泌します。このホルモンが子宮内膜を厚くフカフカに成熟させ、受精卵の着床に備えます。妊娠が成立しなければ黄体が退縮してプロゲステロンの血中濃度が一気に急落し、役目を終えた内膜が剥がれ落ちて通常の生理が起こります。
しかし、何らかの理由で卵胞が十分に発育せず排卵が起きない場合、黄体は形成されません。黄体ホルモンが出ないままエストロゲン(卵胞ホルモン)のみが分泌され続けると、子宮内膜は限界まで肥厚を続けます。やがて自らの厚みを支えきれなくなった内膜の一部が脆く崩れ落ち、じわじわと出血を起こします。これが生理があるのに無排卵の理由であり、外見上は月経と全く区別がつかない出血の正体です。
日本生殖医学会などの報告によると、不妊因子の約20〜25%に排卵障害が関わっており、周期的な出血がある女性の潜在的な無排卵も無視できない割合を占めています。「血が出ている=排卵している」という思い込みこそが、受診の遅れを招く最大の盲点となっています。