ネット上で囁かれる「歯ぎしりマウスピースによる顔痩せ」という言説は、単なる都市伝説やプラセボ効果ではありません。解剖学および口腔生理学の観点から、極めて明確な根拠が存在します。その中心にあるのが咬筋肥大とエラ張り改善の理由です。
食事の際に食べ物を噛み砕くために働く「咬筋(こうきん)」は、下顎の角(いわゆるエラの部分)から頬骨にかけて付着している強力な筋肉です。日中の通常の咀嚼であれば適度な負荷で収まりますが、睡眠時の無意識な歯ぎしりや食いしばり(ブラキシズム)では、意識下では出せない体重の2倍から3倍(50〜100kg以上)もの凄まじい荷重が奥歯と顎関節、そして咬筋へ持続的に加わります。つまり、毎晩何時間も重いバーベルを持ち上げ続けるハードな筋トレを顔面で行っている状態にほかなりません。
その結果として生じるのが咬筋の異常な発達、すなわち咬筋肥大です。筋肉が外側へ盛り上がり、輪郭がベース型や四角いホームベース顔へと変形していきます。ここで歯科用ナイトガードを装着すると、上下の歯が直接接触して強く噛み合う物理的なロックを解除できます。マウスピースの厚みによって下顎の噛み込み位置がわずかに開き、筋電図測定においても咬筋の過度な収縮が抑えられることが実証されています。過剰な筋トレ状態が強制終了され、食いしばりによるエラ張り解消と咬筋の緊張緩和とフェイスラインの引き締まりが同時に進行します。
脂肪が燃焼して体重が落ちるわけではなく、異常にパンプアップしていた筋肉が休まり、本来のスリムなボリュームへと萎縮(廃用性萎縮に近い自然治癒)していく現象こそが、ナイトガードの小顔効果をもたらす決定的な正体です。