肺炎の治療期間を左右する最大の変数は、原因となる微生物と患者自身の生理的予備力です。特に臨床現場で治療経過の予測が分かれるのが「マイコプラズマ肺炎」と「誤嚥性肺炎」の2大疾患です。
学童期から青壮年層に好発するマイコプラズマ肺炎治るまでの日数は、適切な抗菌薬治療が開始された場合、発熱そのものは3〜5日程度で沈静化します。しかし、前述の通り「マイコプラズマ咳」と呼ばれるコンコンという乾いた頑固な咳嗽は、解熱後も2〜4週間にわたって継続するのが特徴です。2026年現在の知見でも、マクロライド耐性マイコプラズマが一定割合存在するため、初期投与で48〜72時間以内に解熱しない場合は、キノロン系やテトラサイクリン系(8歳以上)への迅速な薬剤変更が求められます。全身状態が良ければ発熱が治まった段階で通常の社会生活へ復帰可能ですが、咳エチケットとマスク着用は長期にわたり必須となります。
これと対極の経過をたどるのが、主に70歳以上の高齢層を直撃する高齢者の誤嚥性肺炎入院日数です。唾液や食物とともに口腔内の雑菌が気道へと流れ込むことで生じるこの病態では、急性期の抗菌薬治療自体は1〜2週間で完了するものの、実際の入院期間は平均して20〜30日、重症例では1ヶ月を超えることが珍しくありません。理由は明快です。肺の炎症が鎮火しても、根本原因である「嚥下機能(飲み込む力)の低下」をリハビリで改善させない限り、食事を再開した瞬間に再発するからです。誤嚥防止のための言語聴覚士による嚥下訓練、栄養状態の改善、退院後の介護環境調整などをパッケージで行うため、若年層の肺炎とは比較にならない療養期間が費やされます。
対して、市中肺炎の代表格である細菌性肺炎の治療期間(肺炎球菌など)は、適切なペニシリン系やセフェム系抗菌薬の投与により、軽症〜中等症であれば投与開始後48〜72時間以内に明らかな改善を示します。臨床基準では「解熱後、さらに3〜5日間は抗菌薬を継続投与」し、トータルで7日〜10日間の内服・点滴を完遂することで再燃を防ぎます。