カラオケにおけるしゃくりとは、本来発声すべき音(目的音)に対して、最初からそのピッチでアタックするのではなく、ごくわずかに低い音程から滑らかに本来の音程へとすくい上げるように引き上げるテクニックを指します。音楽理論においては「ポルタメント」や「グリッサンド」に近い発声アプローチであり、ボーカルの立ち上がりに柔らかな曲線を与える効果を持ちます。
例えば「あ」という歌詞を「ド」の音で歌う際、最初から「ド」を発音するのではなく、「シ」または「シ♭」あたりの低めの音から声を立ち上げ、ミリ秒単位の極めて短い時間で滑らかに「ド」へ移行させます。このわずかな音の移行が人間の耳には「感情の揺らぎ」「切なさ」「色気」として知覚されます。宇多田ヒカルや玉置浩二、米津玄師をはじめとする表現力に定評のあるアーティストの歌唱データを解析すると、フレーズの歌い出しや感情が高まるサビの頭において、極めて精緻なしゃくりが自然に組み込まれていることが分かります。
カラオケの画面上では、ガイドメロディーを示す音程バーの開始部分に、上向きの曲線矢印マーク(しゃくりマーク)として視覚化されます。マイクが拾った入力音声のピッチ推移が、規定の閾値(下から上への滑らかな移動)を満たした瞬間にリアルタイムで検知され、加点判定のトリガーとして蓄積されていく仕組みです。