「毎日ストレッチをしているのに、なぜか股関節の硬さが抜けない」と悩む臨床現場の患者は後を絶ちません。整形外科や理学療法のリハビリテーション現場が指摘する股関節が硬い決定的な理由は、単なる柔軟性不足ではなく、関節を取り巻く筋肉の「相反性抑制」の破綻と運動パターンの固定化にあります。
人間の股関節は、球関節として三次元の自由な運動を許容する構造を持ちます。しかし、1日7〜8時間におよぶ着座姿勢が定着すると、骨盤が後傾あるいは過度前傾した状態で股関節が屈曲位に固定されます。この状態が常態化すると、大腿骨を外側にひねる働きを持つ外旋筋群は常に縮こまったまま緊張(短縮位拘縮)するか、あるいは骨盤の傾きを代償するために引き伸ばされながら緊張(遠心性過緊張)を強いられます。
ここで見落とされがちなのが、内旋筋と外旋筋の違いおよびそのパワーバランスです。内旋筋(大腿筋膜張筋や中臀筋前部線維など)と外旋筋群は、互いに引っ張り合うことで大腿骨頭を寛骨臼(骨盤側の受け皿)の中心に引き止めています。ところが、足を組む癖や片足重心の立ち方によってこの均衡が崩れると、大腿骨頭が前方や上方へ偏位します。これが骨盤の歪みと痛みの真相であり、骨盤そのものが歪んでいるというよりも、深層筋のアンバランスによって関節の適合性が失われた結果、関節包や周囲の筋肉に過剰な剪断応力が加わっているのです。