歴史に名を残した偉人の中にも、その類まれな身体的特徴からマルファン症候群であったと推測されている人物が複数存在します。代表的なのが、第16代アメリカ合衆国大統領のエイブラハム・リンカーンです。身長193cmと当時のアメリカ人としては並外れた長身であり、異常に長い手足や凹凸のある顔立ち、視覚障害の疑いなどがあったことから、1960年代以降、多くの医学者によってマルファン症候群の仮説が提唱されてきました。現在もDNAによる完全な確証は得られていないものの、疾患啓発の文脈で語り継がれる代表格となっています。
音楽界では、19世紀の伝説的ヴァイオリニストであるニコロ・パガニーニや、巨大な手で知られる作曲家セルゲイ・ラフマニノフも同様の仮説が立てられています。パガニーニの人間離れした超絶技巧は、尋常ではない関節の柔軟性と指の長さに起因しており、結合組織の異常がもたらした奇跡の副産物だったのではないかと語り草になっています。
一方で、現代の芸能界においては「高身長で手足が長い」「顔が小さく痩せ型」という外見上の特徴だけで、ネット掲示板やSNS上で勝手にマルファン症候群と結びつけられるデマや憶測が後を絶ちません。公表の事実がない有名人に対して外見だけで病名を断定することは極めて不適切であり、噂の多くは根拠のない推測に過ぎない点には注意が必要です。