三井寺の見どころを語る上で欠かせないのが、数々のドラマチックな逸話と名勝の存在です。
金堂の近くにある「霊鐘堂」に安置されているのが、有名な「弁慶の引き摺り鐘」です。平安時代の合戦の際、比叡山の武蔵坊弁慶が三井寺から鐘を奪って比叡山へ引き摺り上げ、突いてみたところ「イノー、イノー(江州へ帰りたい)」と響いたため、弁慶が怒って谷底へ投げ捨てたという伝説が残されています。鐘の表面には、その際に付いたとされる生々しい傷やひび割れが今も残っており、歴史ファンの知的好奇心を刺激します。
一方、鐘楼に掛かる名鐘は近江八景の一つ「三井の晩鐘(みいのばんしょう)」として全国にその名を知られています。その音色の美しさは「残したい日本の音風景100選」にも選定されており、参拝者は冥加料を納めることで実際に一撞き鐘を突く体験が可能です。夕暮れ時の境内に響き渡る重厚で澄んだ余韻は、訪れる人の心を深く鎮めてくれます。