楽曲のクオリティを極限まで高めたのが、作詞・阿久悠、作曲・鈴木邦彦という歌謡界最高峰のクリエイター陣です。のちに数多のメガヒットを連発する阿久悠にとっても、本作は自らの作詞哲学を具現化した初期の重要作に位置づけられています。
それまでの昭和歌謡における「涙」は、未練や悲哀に浸るための情緒的なモチーフとして描かれる傾向が主流でした。しかし、阿久悠が提示した『さらば涙と言おう』の歌詞の意味は、従来のウェットな感傷を真っ向から拒絶しています。
「さよならだけが人生ならば/また来る春は何だろう」という問いかけに見られるように、悲しみや別れを終着点と捉えるのではなく、その先にある新たな始まりを信じて涙に別れを告げる。感傷に溺れることを潔しとせず、泥臭く立ち上がり前進する少年の覚悟を、阿久悠は極めて骨太で平易な言葉で描き切りました。
鈴木邦彦によるダイナミックなブラスセクションと前進感に満ちたメロディラインは、阿久悠の言葉が持つ力強さを倍加させ、聴く者の胸にダイレクトに突き刺さる構造を作り上げています。