音楽理論の観点から見ても、『ハロー・グッドバイ』には聴く者を惹きつけて離さない緻密なギミックが満載されています。楽曲のキーは親しみやすいCメジャー(ハ長調)を基調としながら、サブドミナントやマイナーコードを巧みに織り交ぜることで、切なさと高揚感を同時に演出しています。
特に特筆すべきは、ポールが奏でるリッケンバッカー4001Sベースの躍動感です。ルート音にとどまらず、まるで第2のリードボーカルのように歌うベースラインが楽曲全体を強力にドライブさせています。さらに、後半に向けて重なるヴィオラのエレガントな旋律が、楽曲にクラシカルな気品を与えています。
そして最大の聴きどころが、一度演奏が終わったかのように見せかけて突然始まるアウトロ(コーダ部分)です。ドラムのタムロールとともに「ヘバ、ヘロー・アロハ(Heba, hello, aloha)」という謎めいたチャントが繰り返され、ハワイアンやマオリの民族舞踊を想起させる熱狂的なリズムへと突入します。アルバム『マジカル・ミステリー・ツアー』のクライマックスを彩るこの祝祭的な演出こそが、楽曲に唯一無二の中毒性をもたらしています。