亜急性甲状腺炎の急性期には、破壊された甲状腺組織から蓄積されていた甲状腺ホルモン(FT3・FT4)が一気に血液中へ漏れ出します。その結果、動悸、息切れ、手指の震え、多汗、体重減少、強い焦燥感といった甲状腺中毒症の症状が出現します。この状態はバセドウ病と酷似しているため、臨床現場での迅速な鑑別が不可欠です。
両者の病態は根本的に異なります。バセドウ病は抗TSH受容体抗体(TRAb)によって甲状腺が自律的にホルモンを「過剰産生」し続ける自己免疫疾患ですが、亜急性甲状腺炎は組織破壊による「一時的なホルモン流出(破壊性甲状腺中毒症)」に過ぎません。したがって、亜急性甲状腺炎に対してバセドウ病の治療薬(抗甲状腺薬:メルカゾールなど)を投与することは明確な誤治療となります。
血液検査におけるCRPの異常高値とTRAb陰性、そして超音波検査による特徴的な低エコー像を確認することで、両者は確実に鑑別されます。