フライト中の肌トラブルにおいて、最も警戒すべき要因は「気圧変化」と「極端な低湿度」の複合作用です。一般的な居住空間の快適湿度が40〜60%であるのに対し、高度1万メートルを飛行する機内では外気を取り込んで除湿・温度調節を行うため、機内の湿度はわずか10〜20%程度まで急激に低下します。これはサハラ砂漠の平均湿度(約20〜25%)を下回る極限状態です。
このような極度乾燥下でファンデーションを塗ったまま長時間過ごすと、肌表面の水分が猛烈な勢いで大気中へと奪われていきます。肌は自己防衛反応として皮脂を過剰に分泌しますが、分泌された皮脂はファンデーションの顔料や大気中の微粒子と混ざり合い、時間経過とともに過酸化脂質へと変質します。この酸化した皮脂が毛穴を塞ぎ、炎症や大人ニキビ、角質層のゴワつきを引き起こす主因となるのです。
加えて、気圧低下(標高約2,000〜2,500m相当まで減圧)に伴う血行不良が皮膚のターンオーバーを一時的に停滞させます。航空医学や皮膚科学の見地からも、長時間のフライトにおける「メイク放置」は、バリア機能の破壊を自ら招く行為にほかなりません。肌の健康を最優先に考えるならば、搭乗前または搭乗直後に速やかにメイクオフする判断が不可欠です。