渡哲也といえば、長年にわたり放送された宝酒造の清酒CMが強く記憶に残る。「よろこびの清酒」を体現するその凛とした佇まいは、日本中の茶の間に親しまれた。実はこのCM撮影の裏側でも、渡は常に家族への配慮を怠らなかったという。
妥協を排して撮影に挑む父のプロフェッショナリズムを、息子は静かに見守っていた。酒を酌み交わすCMの情景そのままに、家庭でも父子は酒を愛し、互いの人生について語り合う時間を大切にしていた。仕事に対する誇りと誠実さを背中で見せた父の教えは、何物にも代えがたい遺産として今も息子の胸に息づいている。