どれほど肉体を再生させ、醜悪な化け物へ姿を変えてまで勝利に固執した黒死牟だったが、悲鳴嶼と実弥の刀に映った己の姿を見て愕然とする。六つの眼を持ち、顔中に異形の角が生えたその姿は、憧れた「誇り高き侍」の姿からはほど遠い、ただの怪異であった。
「私はただ、お前になりたかったのだ」――崩れ去る肉体の中から零れ落ちたのは、幼き日の縁壱に与えた手作りの「竹笛」だった。400年もの間、着物の懐に大切にしまい続けていたその笛こそが、彼が本当に捨てきれなかった弟への愛憎の証。最強の強さを誇りながら、何一つ残すことができなかった男の最期は、見る者の胸を締め付ける。